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起業家の時そして起業家支援の時(後編)

 自身としても、500以上の学生団体/サークルの活動支援をしてきた中で、広く浅く応援をしてきたものの、より深く関わってサポートをしていきたいという思いも芽生え初めてきており、また、いくつか起業家の悩み相談を受けていたので、起業家支援を行うことについては何の抵抗もなく入っていくことが出来ました。当時、マッキンゼー出身者がベンチャーファンドを組成するという話もあり、そこにも参画させてもらい、財務諸表の読み方であったり、マッキンゼーとしてのロジカルシンキングを学ぶ機会ももらうことが出来ました。ただ、ここで日本の起業家支援の現場で大きな違和感を覚えました。当時2003年~2004年頃だったのですが、ベンチャーキャピタルの多くが(「多く」と言いましたが「全て」といっても誤りではないです)、投資検討をするにあたり『3期分の会社の決算書』が投資委員会における必須資料になっていました。つまり、3年間の実績がないと起業家はベンチャーキャピタルから投資をしてもらうことが出来なかったのです。

 自ら起業をした身として、また、多くの起業家と触れてきた身として、ここに大きな違和感を覚えました。起業家にとって、創業時や起業直後に一番資金需要があります。ただ、一番起業家を支援するべきベンチャーキャピタルでさえも3年間の実績をもって投資検討をするというのが当たり前になっていました。これはおかしいと思い、「これから起業する人や起業直後の人にも投資をする」ということを決め、起業後に得た自己資金でベンチャー投資・起業家支援を行うことにしました。この話を、周りのベンチャーキャピタルにも言ったところ、ほぼ全ての人が『そんなの上手くいく訳がない』『それは投資ではなく、ただの直感に頼った遊びでしかない』と言ってきました。ただ、結論から言うと、このビジネスはとても成功しました。

 学生時代に多くの学生団体/サークルの代表者ともコミュニケーションをしている中で、上手くいく人とそうでない人の見極めは自然と出来るようになっていました。また、当時はスタートアップ支援のベンチャーキャピタルはほぼ皆無と言っていいくらい存在していなかったために、1年間で300人を超える起業家の方と会う機会をもらいました。特に投資対象とする分野も決めておらず、完全にその人の将来性や可能性、また、どのような関わりをすれば自分自身が価値を提供できるかに限定して投資を行い、また、投資先企業の取締役や執行役員に就任して、経営者と二人三脚で企業価値を高める取組みをしてきました。結果的に投資後の2年後~3年後に、多くのベンチャーキャピタルがそれぞれの企業に投資をしたいと言ってくるようになり、その時点で自身が投資をした株式を譲渡する形でEXITを行いました。当時の投資成績は一般的なベンチャーキャピタリストが目標としている投資成績に比べると圧倒的に高いパフォーマンスを出すことが出来ましたし、また、スタートアップ投資の成功事例を創ることが出来たと考えています。

 2007年以降にはいくつかスタートアップ対象のベンチャーキャピタルが増え始め、最近では多くのベンチャーキャピタルがスタートアップも投資対象になっています。これは非常に良いことであり、日本で起業家が増える土壌は以前に比べて格段と改善したと感じています。ちなみに、当時(これは今でもかもしれませんが)、他のベンチャーキャピタルの方と話をしていて残念に思うことがもう2つありました。1つが「ハンズオン型投資」という言葉です。起業家に対して、ただ資金だけでなくその他の支援もすることを「ハンズオン」といいますが、この「ハンズオン」という言葉が個人的に非常に嫌でした。「ハンズオン」という言葉が何か偉そうで、起業家に比べて投資家の方が上というように思えてしまいます。

 こうした言葉が嫌だったので、必ず自分自身では「ジョイントイン型投資」という言葉を使うようにしていました。実際に起業家は人生をかけてチャレンジしています。その夢の実現を伴走して、共に実現することが何よりも重要であり、意義があることです。「ハンズオン」ではなく夢の実現に「ジョイントイン」させてもらう。その精神が大切だと強く感じていました。もう1つが投資をしたら勝手に企業が成長すると思い込むベンチャーキャピタルが多かったことです。「うちの投資先は全然上手く行かない」といっているベンチャーキャピタルの方に、「企業価値を上げるためにどういう取組みをしているんですか?」と聞いても「毎月1回面談している」とか「資金を提供している」とか回答するベンチャーキャピタルはかなり多いです。ただ、それだけで企業価値が上がる訳がありません。企業の課題は経営者から聞くものではなく、投資家自らが分析して、経営者に対して課題解決策と共に提示をするのが投資家の責務です。

 起業家には情熱や業界知識においては負けるかもしれませんが、投資家は様々な企業を見ている分、課題解決策についてはより客観的かつ俯瞰してみることが本来できるはずです。起業家が見えていない点を含めて課題を想定し、解決仮説を提示することが出来るはずであり、逆にこれが出来ない投資家は起業家にとって本当に必要なのでしょうか。
このように起業家支援からは多々学びがあり、また、起業家と一緒に夢の実現を果たせたことは大きな成長がありました。

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