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社会起業家支援の話(後編)

 社会問題を事業を通じて継続的・発展的に解決していく存在として、社会起業家はこれからも益々その存在価値が高まってきますし、また、社会起業家が活動することで既存の企業経営者も自社の利益だけでなく、社会問題の解決をして存在価値を発揮することではじめて企業として存続していけると考えるようになり、いい意味で相互の価値を高め合っていけるのではないかと考えています。また、社会起業家支援という文脈ではもう1つ象徴的な取組みもしてきました。それがアショカという社会起業家支援の世界的団体の日本法人設立です。アショカというのはマッキンゼー出身のビル・ドレイトン氏が設立した社会起業家支援のための国際的組織です。世界中で活躍する社会起業家の中で、特に社会問題の解決に貢献する可能性があり、また、他の地域にもスケールアウトできる可能性がある社会起業家をアショカ・フェローとして認定し、3年間の活動資金を支援したり、ネットワーキング支援をする団体です。

 有名な事例でいうとグラミン銀行のムハマド・ユヌスさんもアショカがアショカ・フェローとして認定したことで世界中にその活動が認知され、その活動の幅が広がったことが知られています。
2011年にアショカが日本法人を設立することになり、槇さんという企業経営者をバックグラウンドとし、ご自身でもNPO経営を行う方が初代代表に就任しました。槇さんより連絡を頂き、初期のアショカ・ジャパンの立上げを行いました。なお、アショカの活動を通じて日本国内の様々な財団ともコミュニケーションを行いましたが、日本における財団及び寄附市場はまだまだ改善の余地があると強く感じています。多くの日本の財団は助成金額が100万円~300万円が上限であり、また複数年度に渡る支援が出来なかったり、団体の人件費には寄付金は使ってはいけないという縛りがあったりします。しかし、社会問題の解決は1年で終わるものではないですし、多くの団体にとって最もかかる費用は人件費です。ここに支援する側とされる側のギャップが多く残ってしまいます。

 実際に多くのNGO/NPOにとって、寄付金などを集めるためにイベントや広報活動を多くする必要が出てしまい、そこにNGO/NPOの代表者ら幹部の時間が使われてしまいます。本来、最もパッションがあり、また社会問題の解決に時間を割くべきである代表者ら幹部の時間が講演会やイベントに使われてしまい、社会問題の解決に専念できないのは本末転倒です。アショカの場合は平均3カ年に渡る支援を行い、当時は1団体について年間3000万円程度を支援することにしていました。もちろん、資金使途についても自由であり、人件費に使うことも認めていました。日本にも日本財団のように大きな資金を支援し、かつ、機動性がある財団はあります。しかし、圧倒的にそうした財団の数は少ないです。ここ10年間で寄附税制のあり方も変わり、またクラウドファンディングなどを含めて寄附の市場は良い方向に変わりつつあります。ただ、NGO/NPOや社会起業家、あるいは大学やアーティストに対する寄附はもっと、ドラスティックに変革する余地があると思っています。

 たとえば海外ではファンドを組成し、ファンドの運用益は金融市場で一定の利回りを出し、その利回りで安定的な寄附をする取組みが主流です。100億円のファンドを組成し、年間5~6%で運用する。その中から1~2%は投資家に還元し3~4%を寄附に回すことで年間3~4億円の寄附を安定的に行うことが出来ます。あるいはふるさと納税などの応用で個人や企業が税制面での優遇を受けるスキームは今後柔軟に考えられるかもしれません。最近は政治家や行政の方とも話す機会が増えましたが、やはり国や地方自治体となってしまうと、「均一な支援」が前提となってしまい、特定の団体を優遇して支援することが出来なくなってしまうということを強く感じます。その意味でも社会起業家やNPOは自由度をもって取組みが出来るので、この価値を伸ばすためにも活動資金が安定的に、かつ、数年に渡って得られることは非常に大きな意義があります。
この点はまだ国内でも解決されていない分野なので、今後チャレンジをしていきたいと思っています。なお、社会起業家の支援をしている時にいつもジレンマに陥ることがあります。それは、実現すべきことが『社会起業家の支援』か『社会問題の解決』かということです。これは一見似ているようで、実は大きく異なることです。

 ベンチャー企業の場合は売上や利益といった経済的指標が成功の基準になります。これを達成するために『起業家の支援』をすることが投資家・サポーターの使命になります。他方で社会起業家の場合は、その法人の成長に加えて社会的課題の解決度が成功の基準になります。これは非常に指標としても難しく、現在は様々なソーシャルインパクトを図る試みもされていますが、正直なところ正確な評価は難しいです。場合によっては『この社会問題を解決したら1億円の活動資金を出す』のように解決したい社会問題とその目標指標を掲げ、その解決のための取組みにいくつかの団体を集めて取り組んでもらうなどの方がよいのかもしれません。

 これらの手法を含めて、社会起業家という領域では取組みを行って20年近く経っていますが、まだまだ改善・改良の余地があると考えています。多くの人の協力を借りながら、この分野は解決をしていきたいと考えています。

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